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「最後の声が聞きたい」御嶽山噴火で不明男性の通報音声、公開を阻んだ「個人情報」の壁

報道局
岐阜特集 2018/6/25 12:30

 

 愛知・碧南市に暮らす大図純司さん(50)。2014年の御嶽山噴火で、兄・和彦さんが行方不明になりました。懸命の捜索にも関わらず、和彦さんが発見されることなく、同年、家族は和彦さんの「死亡届」を出しました。

 

 

 しかし2015年、和彦さんが噴火直後にした119番通報の声が残っていることが発覚。音声の公開を訴えたのです。

「痛いでも苦しいでも最後の言葉なんで、仮に肉声だとしたら聞くと、後でまた苦しくなるかもしれないけど、聞けなくてもんもんとしているよりは、聞きたいなと思う」(純司さん)

 仕事熱心で、子供好き。地元の仲間と一緒に出かけるのが好きだった兄。見つかったのはリュックだけ。せめて、声を聞いて死と向き合いたい。しかし

「“家族でもダメ”ってことですね」(純司さん)

 119番通報の音声が公開されることはありませんでした。なぜ、家族なのに通報の音声を聞けないのでしょうか。

 

「個人情報」とは誰のものか

「行方不明になっている場合は“ご本人からの同意が得られない”ということで、一般的に非開示としてさせていただいている」(木曽広域消防本部 三澤昌孝 消防次長)

 音声を保管していた消防本部。その消防を管轄する長野・木曽広域連合では、「木曽広域連合情報公開及び個人情報保護に関する条例」で、死者の情報も個人情報として保護していて、“本人の同意”がないと公開できないと判断したのです。

 

 

 2015年から公開の請求を行うたびに、消防から届く拒否の通知。純司さんは納得できませんでした。

「個人情報って何やろうね」(純司さん)

 和彦さんが行った119番の音声を公開するか、公開しないのか。実は、判断を下す担当者たちも揺れていました。

 2015年10月に開かれた、情報公開請求を審査する会議の議事録には。

「私がもし、そういう立場だとすればやはり、その声を聞きたいとかそれで納得するという気持ちもある。心情的には普通ですよね」(審査員)

「単純に声を聞きたいだとかでは、請求権は発生しないと考えています」(行政の担当者)

「死者の個人情報は誰が開示できるんですか。誰も開示できなくなるという事なんですよね?」(審査員)

「こちらでも悩んだところは死者の情報の扱いですが、自治体によって判断が違うところがありまして」(行政の担当者)

 3時間に及んだ議論。公開すべきという声が多かったにも関わらず、公開しないことを決めたのです。

 

一律ではない「公開基準」への違和感

 国が「個人情報の保護に関する法律」で定める「個人情報」。その保護や公開の基準は、自治体に委ねられています。

 私たちは全国の自治体や消防を所管する組合など約2000の団体にアンケートを実施しました。

 

 

 大図和彦さんのようなケースでも、約4割の消防本部が119番通報を公開できると回答。過去に、遺族から声を聞きたいという請求を受け、データを公開したことがある消防本部もありました。

 浮かび上がったのは、公開・保護するのかの基準が、自治体ごとに異なるという現状だったのです。

 さらに、「基準となるガイドラインはあった方がいい」、「小規模自治体は開示請求の件数が少なく公開可否の判断材料がとぼしい」という意見もありました。

 なぜ自治体ごとに個人情報の公開基準が異なるのか。自治体の条例を所管する総務省に話を聞きました。

「個人情報に対する考え方というものが、地域によってかなりセンシティブな地域もあるかもしれないし、そうでないところもあるかと思う。その地域の特性に応じて適切にご判断いただければというふうな考えを持っている」(総務省地域情報政策室 稲原浩 室長)

 個人情報の取り扱いについての感覚には地域の特性があるため、総務省はどの情報を開示するか自治体の判断に任せているといいます。

 一方、個人情報を研究する情報法制研究所の鈴木正朝理事長は、総務省の見解に異論を唱えます。

「(個人情報には地域性がある?)ない、それは間違いです、明確に間違いです。具体例を挙げてみろと。地域性があって地域で決めなければいけないものが本当にあるなら、具体的にこれだって出てくるはずです。1回も出てきたことがない。本当は憲法論レベルの話で、全国で統一するのが当たり前の話。これは本来は(条例ではなく)法律マター」(鈴木理事長)

 

「“声”を家族のもとへ」

 今年2月。純司さんと、和彦さんの友人の姿が木曽広域連合にありました。

 手にしていたのは、約4100人分の署名。実は、和彦さんの同級生が中心となり「家族の元へ“声”を帰してあげてほしい」と音声公開を訴える署名活動を行っていたのです。

「ぜひこれを受け取っていただいて、請求を汲んでいただければ、本当にありがたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願い致します」(和彦さんの同級生 深見悟志さん)

 

 

「これだけまだ、みなさんに関心があるというのが感じられたし、家族としては本当に、その一人一人の気持ちがありがたいので、これを一例として良い方向に進んでくれれば一番いいかなと思っています」(純司さん)

 署名による訴えを受け、個人情報保護条例が改正されるのか、注目が集まった木曽広域連合の5月議会。

 

 

「本案を原案の通り可決することにご異議ございませんか」(議長)
「異議なし」(議会)
「異議なしと認め、本案は原案の通り可決されました」(議長)

 改正された条例には、死者の情報を、「配偶者や2親等以内の血族であれば自分の情報として開示できる」という文言が新たに加えられました。

 そして条例改正から8日後、家族のもとへ119番通報の声が届きました。封書に入っていたのは、通報内容を書き起こしたメモと音声データ。純司さんは、その音声の内容を会見で明らかにしました。

 

 

「“大図和彦”と名乗ったのと、噴火の時に岩が頭と腰を直撃し、動けないという状態を伝えておりました。兄本人が(通報を)かけていると確認できる箇所がありまして、(その声を聞いた)母が涙を流す姿が特に印象に残っております。長く時間はかかってしまいましたが、今回請求したことで、兄の声が聞くことができた。本当に最後の声が聞けただけで良かったなと、今、思っているところです」(純司さん)

中京テレビ報道局記者 鈴木菜摘

 

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