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ダムに沈むふるさとへの想い、新しい土地でふるさとの景色を取り戻したい100歳の人生

報道局
愛知特集 2019/4/29 21:00

 春。色とりどりに花を咲かせる「しだれ桃」。この花にひとりの男性が込めた、ふるさとへの想いがあります。

 6年前、愛知県設楽町で伊藤七郎さん(当時95)と出会いました。

「ここで生まれた。言葉じゃ、なんて言い表していいのかわからんようなもんだでね」(伊藤七郎さん(当時95))

 124世帯が暮らしていた七郎さんのふるさとは、ダム建設で水の底に沈むことになっています。

 国が治水、利水のための多目的ダムとして建設を進めている「設楽ダム」。

 計画は46年前から進められ、その総工費は約2400億円。七郎さんの人生の半分は、このダム建設に翻弄されてきました。計画が発表された当時、働き盛りだった水没地区の多くの住民が建設に反対。七郎さんも反対運動を行いました。

 事態が動いたのは計画発表から実に30年を過ぎたごろ。過疎化と高齢化が進む町では反対の声が徐々に小さくなり、2009年2月ついに建設同意の調印式が行われました。ところが…。

「ダム事業の見直しについて、直轄事業と水資源機構事業では、平成21年度内に用地買収や本体工事などの各段階には新たに入らないこととします」(前原誠司国交相(当時))

 調印式から、わずか7か月後。今度は政権交代でダム建設の計画は事実上ストップしたのです。“下流の人々のためにふるさとを出てゆく”と長い時間をかけてようやく心を決めた末の出来事でした。

「このままダムが中止だか、やめっちゅうことになると、我々が何のために犠牲になってね。田畑から家まで壊して出てかんならんことになったわけだもんでね。それを何とか、せっかくみんながその気持ちになったことも生かすためにね、ダムの話にもっと早く決をつけてもらいたいわね」(伊藤七郎さん(当時95歳))

 七郎さんが失ったのは、住み慣れた家だけではありません。かつて水没予定地に咲いていた約2000本ものしだれ桃。過疎の町を元気にしたいと七郎さんが苗を育てては近所に配り、少しずつ広めてきたものです。

 「しだれ桃の里」と呼ばれ、遠方からも人が訪れるほどでした。

 6年前。そのしだれ桃の里に異変が起きていました。あれだけあった木は切り倒され半数以下になっていたのです。

「ダムで沈むもんでね。補償対象になって、補償をもらったもんでね。そいで切っちゃって」(伊藤七郎 さん(当時95歳))

 移転の時に自分の土地の木を切ると、補償金が支払われるのです。

 計画がストップしている間も移転は進みました。人が消え、町が消えてゆく水没予定地。七郎さんの作ったしだれ桃の里も消えていったのです。

「なるべくなら、もう早く移転地へ行きたい。早く行かんと自分の命がもたんようになるで、やっぱり自分は新しいところへ行って、住んでから終わりたいと思うんでね」(伊藤七郎さん(当時95歳))

 止まっていたダムの計画が再び動き出したのは5年前の事です。

 去年、七郎さんは100歳となりました。移転先の新しい家であることを始めていました。

「手入れは息子がやったり、人に頼んで切ってもらったり」(伊藤七郎さん(当時100))

 伊藤さんは自宅の横に、もう一度しだれ桃を植え始めていたのです。それは新しい土地でふるさとの風景をもう一度取り戻す、しだれ桃に込めた想いでした。

 そして、今年4月、伊藤さんの自宅の横に広がるしだれ桃。

 世話をしていたのは長男の怜(さとし)さん(77)でした。

「寒かったおかげできれいに咲いたもんね。だで、おやじも良かったなと喜んでいるんじゃないかな」(伊藤怜さん)

 父の思いを受け継ぐ息子は、水没予定地のしだれ桃の種を拾い集め苗木にしていました。

 ダムの完成を見ることなくこの世を去った七郎さん。ふるさとへの思いはしだれ桃に託され、受け継がれていきます。

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