瀬戸少年院 3日遅れの成人式 更生誓う息子に母は涙…塀の中へ潜入取材
成人の日から3日遅れの1月16日。愛知県の瀬戸少年院で成人式が行われました。知られざる塀の中の人間模様をカメラが追いました。
東海地方に住む鈴木邦恵さん(仮名・40代)。息子の成人式に向かっています。
「緊張していますね。(昨夜は)寝られませんでした。途中、起きたり」(鈴木邦恵さん(仮名))
自宅を出てから約2時間。着いたのは、息子が入っている瀬戸少年院です。
しかし、到着しても 鈴木さんはなぜか車を降りようとしません。
「この少年院に入ってからのことを思い出しながら、きょうまでをたどります。息子のことも、自分のことも」(鈴木さん)
成人式まであと1時間。この日、息子に届ける言葉を1人で考えたいという鈴木さん。一生に一度の成人式を塀の中で迎えることになった息子に、お母さんは何を伝えるのでしょうか。
愛知県の瀬戸少年院。ここに収容されているのは、詐欺や傷害などの罪を犯した少年たち。現在は、16歳から20歳の約60人が生活し、更生のための教育を受けています。
その一人が鈴木邦恵さんの息子、篤志さん(仮名・20)です。
「なんか悪いことというのは分かっていたんですけど、本当に自分のことしか考えていなかった」(鈴木篤志さん(仮名))
篤志さんは、窃盗の罪で半年以上前に少年院に送致されました。
成人式の数日前。篤志さんは、少年院で成人式を迎えることに対するある思いを担任の教官に打ち明けていました。
「お母さんが一番悲しいのかなと思います。成人式って自分の子どもの晴れ舞台じゃないですか。その姿を(外で)見せてあげることができなかったというのを考えると…」(篤志さん)
篤志さんは幼い頃に両親が離婚。お母さんが女手一つで育ててくれました。
中学生になったころから素行が悪くなり始めた篤志さん。お母さんに対してきつく当たることもあったといいます。
しかし、逮捕後、あることがきっかけで自分の過ちに気付いたといいます。
「留置所にいる時に、(母が)僕の顔を見て、すぐ涙を流して、今まで泣いた姿はあまり見たことがなかったので、やってしまったことの重大さを感じるようになりました」(篤志さん)
一方、お母さんは、息子が非行に走ったのは、自分のせいだったのではないか、と篤志さんの逮捕後、思うようになったといいます。
「父親がいないから、その分強く育てないといけないと(思って)。正論と理想論を押し付け過ぎてきた」(鈴木さん)
篤志さんが少年院に入ってから、それぞれの過去を振り返り、過ちに気付いたという親子。
頻繁に手紙のやりとりをし、月に2回ある面会には、鈴木さんは必ず行くようにしているといいます。
そして、迎えた成人式の日。少年院が用意したスーツを身にまとう篤志さん。
「緊張するというか、身が引き締まる思いです」(篤志さん)
成人式の会場には、鈴木さんの姿も。
成人式を迎えたのは9人の少年。保護者、在院生を前に一人一人誓いの言葉を述べました。
「1年前の僕は成人式をまさか少年院で迎えることになるなんて、まったく予想もしていませんでした」
「自分の何がだめなんだろう。自問自答を繰り返しても、答えは今も見つかっていません」
「もう少し逮捕が後だったら、間違いなく刑務所に行くことになっていた。これはある意味、僕にとっての最後のチャンスだととれると思います」(新成人となった少年たち)
最後は、篤志さんの発表です。
「僕のこれまでの人生は決して順調とは言えず、たくさんの失敗や過ちを繰り返してきました。しかし、母は僕の更生を心から願い待ってくれています。これから先の人生ではしっかりと地に足をつけて生きていきます。最後にお母さん、今まで迷惑や心配ばかりかけてきて、ごめんなさい。一生懸命育ててきてくれてありがとう」(篤志さん)
目に涙を浮かべながら伝えた篤志さんの感謝の言葉にお母さんも涙が止まりません。
式の後は、待ちに待った30分間の面会です。
鈴木さん「おめでとう。しっかり言ってるから、びっくりした」
篤志さん「今までありがとう」
鈴木さん「至らない母親でごめんな、今まで。私も反省しています」
篤志さん「これを節目にちゃんと恥じない息子としてやっていくので」
息子の成人式を終えた鈴木さん。数か月後に出院する篤志さんに対して。
「社会に出てから大変なこともあると思いますが、息子が一人で生きていけるようになるまで支えていきたいと思います」(鈴木さん)