2020年09月25日 16時25分
「伊勢大廟参拝記念」と称した浮世絵。
大正時代ではなく、昭和の時代の発行であることは間違い無いと思われる1枚。(理由は後述)
もっともその時代であれば「絵はがき」もあったので、こうした浮世絵での観光案内があるのは少々驚きですが、それは令和を生きる私の思い込みであったり、先入観だったりするのでしょう。
この画像の真ん中にあるのは「山田停車場」(今の伊勢市駅)。もともと参宮鉄道が津と山田間を開通させたときに開業した駅で、1907年(明治40年)に国有化されました。なお近鉄山田線(開業時は参宮急行電鉄)が伊勢市内に到達したのは1930年(昭和5年)のことで、この浮世絵にはそれらしき電車がないので、時代考証としては昭和5年以前と思われます。
駅前の電車は三重交通神都線(当時は伊勢電気鉄道)です。
また左にあるケーブルカーは「朝熊(あさま)岳登山電車」とありますが、正式には朝熊登山鉄道のはずです。大正14年の開業で、ケーブルカーの左側にある開設には「傾斜ノ急ナルハ日本第一ト称セラル」と書かれています。東京の高尾山に登るケーブルカーが今は日本一の急勾配なのですが、このケーブルカーが残っていれば、それだけで観光客が増えたかも知れません。
※この項は三重県博物館のHPを参照して書いています。
さて朝熊登山鉄道がこの浮世絵にあるということから最終的な発行年代の特定は昭和に入ってからであることは間違い無さそうで、なおかつ1枚目の画像下段に式年遷宮と思われる行列もあることと、やはりこの浮世絵が出されることの意味に鑑み、昭和4年の第58回式年遷宮の前後の発行であろうというのが私の結論です。
蒸気機関車が牽く列車。そこにある数字は山田駅から各名所までの距離。キロメートルではなく、「里」での表記が思いっきり新鮮です。また「丁」という表記もありますが、「一丁」はざっくり109メートルであり、一里=36丁ということもあってこの表記に慣れないものにはイメージがつかみにくいこと夥しいというのが私の感想です。
とまあとりあえずの解説はこれくらいにして、皆さんも見ていて何だか楽しくなってきませんか。