2021年01月24日 12時02分
內田 百閒(うちだ ひゃっけん、1889年(明治22年)5月29日 ~1971年(昭和46年)4月20日)著「阿房列車(あほうれっしゃ)」。
三笠書房刊 1952年12月30日第1刷刊行。
私の手元にあるのはその第2刷。真ん中にある「印」は著者検印。いつの時代まであったか覚えていませんが、見なくなって2~30年は経っていそうです。
価格に「定価」と「地方価」があるのを見たのは、私にとってはこの本が初めてでした。
「地方価」って何だろうと調べたら、国立国会図書館が運営するレファレンス協同データベースに、三田市立図書館 (兵庫県)『書籍の「地方売価」がなくなった年を知りたい』があり、回答欄に『『日本雑誌協会日本書籍出版協会50年史』のWwb版 P.38によると、“1959年9月1日に「全国均一運賃込み販売制」が、書協・取協で取り交わされ、廃止となった。”との記載があった。
http://www.jbpa.or.jp/nenshi/ 「地方売価」は、「地方価格」または「地方価」ともいう。』を見つけました。
書籍が全国一律価格でなかった時代があったことは分かりましたが、それ以上は私はギブアップ。
ところで今回はそうした事ではなく、この本そのものの話。
內田 百閒は小説家で随筆家。で、この本は自身の旅の紀行文(随筆)。この著者は今風に言えば乗り鉄で、鉄道に乗ることを目的にした旅を楽しんでいました。そしてこの本を私は随分前に一部を読んだ記憶があるのですが、シリーズ全作は手つかずです。
さてこの本の価値について一言。なおあくまでも私の私見です。
昭和の時代だけではなく、それ以前でも鉄道そのものの歴史(路線、車両、駅などの施設…)は、公文書などで探ることが出来ます。しかし当時の車内の様子などを記録した公文書はどうでしょう?
サービスを提供する側ではなく、サービスを受ける側から見た駅員さんや車掌さん、食堂車や車内内販売の様子はなかなか見当たらないというのが実情ではないでしょうか?「阿房列車」のシリーズはそうした当時の風俗も描かれており、遠い過去の出来事なのに「へーっ」という感想も持てる興味深い一冊です。
私の鉄道史を研究している知人は、「この一冊を読まずして戦後の鉄道を語るなかれ」というほどの勢いで、それは私にとってもうなずける範囲ではあります。
とまあそんなこともあって現在、絶賛読書中です。
(参考)
この本は、NPO法人名古屋レール・アーカイブスの蔵書です。この会では、鉄道事業者やメーカーに関する資料だけではなく、宮脇俊三氏を始めとした鉄道に関する随筆などの読み物も数は多くありませんが所蔵しています。