2021年09月17日 15時56分
呼続駅から名鉄名古屋駅方面の電車に乗るとすぐに山崎川を渡ります。そしてそこに陸閘門ゲートといういささか耳慣れない設備があります。
(陸閘=りっこう。「りくこう」と読むこともあるようです。)
国土交通省関東地方整備局ウェブサイトから転載「陸閘とは、堤防を切って設けられた河川への出入り口を閉鎖する門のことで、洪水の時には陸閘が閉められ堤防 としての役割を果たします。」。つまりこの陸閘門ゲートは山崎側の水位が上がり、この線路を越えそうになると閉じられて、謂わば堤防となる設備です。
この写真では電車と直角方向にある青い鉄製の設備です。
踏切の向こう側に大きな柵(ゲート)が内蔵されていて、いざという時には、それが手前に向かって出てくるようになっています。もっとも柵と言っても大きな1枚の戸だと思ってください。
堤防との関係は何となく分かってもらえるでしょうか?以前、名古屋市役所の方からお聞きした話では、ここの陸閘門ゲートは、鉄道用では中部地方唯一との事でした。
当然のことながら対岸にも同じ設備があります。ところで実際に使われることはあるのでしょうか?そしてそもそも作られたきっかけは?
1959年(昭和34年)に襲来した伊勢湾台風。その時、この山崎川は堤防が決壊し、辺り一面は広範囲で床上浸水となりました。何故それを知っているかと言えば私の家(平屋)もその被害にあったからで、私の人生の一番古い(幼い頃の)記憶は、父が腰まで水に浸かりながら私を背負って近所の数階建ての社宅に避難したことです。
そしてその後、山崎川の堤防はコンクリート製の高くて頑丈なものになり、道路(橋)はそれに合わせて作り替えられたものの鉄道橋は簡単に嵩上げは出来ないため、このような陸閘門ゲートとなりました。
では実際に使われたことはあるのでしょうか?名古屋鉄道に勤務されていた方からは何度かあると聞きましたが、実際に閉じている陸閘門ゲートを、写真であっても見たことはありません。一度見たい物だと思っても、使用される状況を考えれば「近づいてはいけない」時なので、多分、一生見ることはないでしょう。