まさに激闘でした。
9月22日(水)、京都市体育館で行われたプロボクシングWBC世界ライトフライ級タイトルマッチ。
チャンピオン・寺地拳四朗選手の9度目の防衛戦。挑戦者は名古屋・緑ボクシングジムの矢吹正道選手でした。
世界初挑戦の矢吹選手は難攻不落の王者を相手に序盤から積極的に強打を放ち試合を優位に進め、
10回、壮絶な流血の打ち合いで劣勢に陥ってから大逆襲に転じ、TKOで勝利し新チャンピオンになりました。
緑ジムからは1997年に飯田覚士さんが、1999年に戸髙秀樹さんがWBA世界スーパーフライ級王者になり、
戸髙さんは2003年にWBA世界バンタム級暫定王者にもなりました。
矢吹選手の戴冠はジム3人目の快挙となりました。
三度、夢を実現させたのは今年74歳になる松尾俊郎会長です。
名古屋市緑区のジムで会長になって今年で43年。
1994年から10年間、ボクシング中継を担当した私は取材でずいぶんお世話になりました。
緑ジムが飯田・戸髙の活躍で活況を呈したのはほんの一時期です。
ジムの経営はいつも順風満帆とはいえず、楽ではない生活が続いても、選手を思う松尾会長の熱心な指導は変わりませんでした。
「夢に向かって頑張る選手がいるなら苦労はいとわない」と60歳過ぎてもアルバイトまでしながら
「このジムからもう一度世界チャンピオンを育てるんだ」と執念を燃やしました。
がんに冒されても克服して現場に戻り、コロナ禍で興行に逆風が吹いても「選手に試合の機会を」と対策を講じて開催に奔走。
有望選手を見出すと「佐藤さん、あの選手はおもしろいよ」、「才能があるんだ!この子なら世界を狙える」、
「ボクもまたファイトが湧いてきた」と前向きコメントが止まらないのです。
今回の矢吹選手の世界戦が決まった時も、「拳四朗は強いけど、矢吹なら勝てる。ボクは絶対いけると思っているんだ」と強気でした。
緊急事態宣言下、県外移動は控えねばならず私は京都での観戦を諦め、動画配信で我慢しましたが
入場シーンで矢吹選手を先導する松尾会長の姿を見ただけで体が熱くなりました。
あんな凄い試合で教え子が勝つ。現役時代に会長が闘った階級で教え子が世界一になる。
松尾会長、たまらなかったでしょう!おめでとうございます。