2021年11月30日 15時06分
里山の風景の一角に5連のアーチ橋が見えます。
未成線となった後、この5連アーチ橋は県道として使われています。この写真は、橋を通過後に振り向いて撮影したものです。まるでローマの世界遺産、水道橋が如くというと言い過ぎかも知れませんが、規模の大きさはともかく、その造形美は通じるものがあると勝手に思いました。
今福線(旧線)のアーチ橋は他にも幾つかあり、それらをまとめて土木学会選奨土木遺産に認定されています。
※土木学会選奨土木遺産とは…『土木遺産の顕彰を通じて歴史的土木構造物の保存に資することを目的として、平成12年に認定制度を設立いたしました。
推薦および一般公募により、年間20件程度を選出しています。』(公益社団法人日本土木学会ウェブサイトから転載)
※今福線のコンクリートアーチ橋群…選出理由は以下の通り。
*未完成に終わった鉄道のコンクリートアーチ橋が一群として現存し、山間の景観に溶け込みながら、悲運な歴史を伝えている。
*竣工年:昭和12年着工、昭和15 年中止
今福線アーチ橋群のシンボル的な存在の4連アーチ橋。
なおこのアーチ橋群は、2015年に島根県のしまね景観賞奨励賞を受賞しています。ここでの注目は賞の中身。「奨励賞 まち・みどり活動部門 まぼろしの広浜鉄道「今福線」 浜田市宇津井自治会殿」とあること。
実はこの景観を保つために地元の自治会の皆さんが草刈りを始め様々な整備を行っておられ、それゆえ賞の対象は地元自治会。もっともそうした活動があるからこそ私たちがこうしてここを訪ねて回ることが出来、このエリアの景観を素晴らしいと思えるのです。
アーチ橋の上は歩くことが出来ます。
画面の左端に4連アーチ橋。そして右上の天空をゆくのは浜田自動車道。思わぬ場所で新旧の出会いはありました。
次に訪れたのは「おろち泣き橋」。そしてその案内看板に注目。ここに限らず今福線の名勝と言える場所にはこうした案内看板があり、QRコードを読み込みと音声で各ポイントの魅力を聞くことができるようになっています。
これが「おろち泣き橋」。この2つ目のアーチの場所にある立つとおそらく目の前の川の流れによるものでしょうか、不思議な音が響いて聞こえてきます。これは実際に立ってみなければ分からないのですが、この橋をおろち(大蛇)に見立て「今福線が開通しないことが決まった日から、おろちがひそかに泣き続けている」という地元の伝承があります。丁度この風景が見える場所。まあ科学的な分析はしないで、まずはここの音を楽しみましょう。
さてここまでで何となく未成線が観光の対象となりうることがお分かり頂けるようになったのではないでしょうか?
そこから今回の未成線サミットに繋がっていくのですが、ここ浜田市には沿線の自治会、まちづくり団体、大学、島根県技術士会など13団体が参加している「今福線を活かす連絡協議会」があります。その目的は、広浜鉄道『今福線』の遺構を活かして交流人口増加など地域の活性化をめざすとのことで、つまり観光誘致を行っている団体です。それにプラス遺構のある浜田市佐野、宇津井両地区の住民がガイドの会を結成し観光客らに魅力を伝えています。ガイドの会ではボランティアガイドの育成も行っており、今回の案内役もそうした方々でした。