
キハ605。
1951年(昭和26年)に常磐炭礦鐵道キハ21として製造され、その後1959年(昭和34年)に岡山臨港鉄道(キハ1003)へ。1984年(昭和59年)には紀州鉄道(キハ605)に移ったものの営業運転に使われることなく現役を退きました。
その後ふるさと鉄道保存協会(有田川鉄道公園)に譲渡され、JR貨物・北陸ロジスティクスで保管(一部修復)の後、縁あって2020年(令和2年)6月11日、ここ岐阜県羽島市の社会福祉法人岐阜羽島ボランティア協会/かみなり村「コンテナのアオキ」にやってきました。

こうして見ると一見、鉄道車両の保存をしている場所に見えますが、実際には「子ども・若者の居場所づくり」の場所。
堅苦しいかも知れませんがここでこの場の運営規程から事業の目的を転載。
(事業の目的) 第1条 社会福祉法人 岐阜羽島ボランティア協会(以下「事業者」という。)が設置する「コンテナ のアオキ」(以下「事象所」という。)では、指定障害福祉サービス事業の指定生活介護(以下「生 活介護」という)を実施するにあたり、適正な運営を確保するために必要な人員及び運営管理に関 する事項を定め生活介護の円滑な運営管理を図るとともに、利用者の意思及び人格を尊重して、常 に当該利用者の立場に立った適切な福祉サービスの提供を確保する。
障がい児者とその家族支援の活動を行い、不登校、ひきこもりの方のためのフリースペースもあるこの場所。そこにキハ605がいるのは事業の目的に沿った「楽しい場所」造りの一環だそうです。

ところで昨年4月オープンの施設の名前「コンテナのアオキ」の由来。それは建物がJRの「貨物コンテナ」で出来ていること。
コンテナというと四角四面で、狭い空間に感じますが、ここのコンテナ群はその構造を維持しつつ、実に快適な空間となっています。

こちらは調理室。
元コンテナであることが見て取れるトイレと洗面のコーナー。その他作業をする部屋を含め、コンテナを活用しているとは思えないゆとりを感じます。勿論、エアコンもあります。
理事長/川合宗次さんの話では、単純なコンテナの連結~組み合わせでは建築基準を満たさないため、それをクリアするため様々な工夫を凝らし、やっとの思いでここの開所に漕ぎ着けたそうです。
もっとも理事長さん曰く、「私は乗りものは好きだけで、鉄道マニアではない」そうです。
キハ605同様、ここに通ってもらえるための動機付けであったり、一方で地域の人たちにもこの場の存在を楽しんでもらおうという気持ちが先にあり、それでどうすれば良いかを考えた結果が現在の形になったそうです。

キハ605の車内。一見綺麗に見えますが…。

そこかしこにかなりの痛みがあり、おって修復をしていきたいとの事でした。
と思っていたら何とこのキハ605、動態保存の道を歩むことになりました。
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【理事長/川合宗次さんからの連絡】
石川県小松市で鉄道関連の保存活動をされている「なつかしの尾小屋鉄道を守る会」の坂井代表と出会い、キハ605の動態保存(エンジン稼働により気動車を動かすこと)にむけて整備をして頂くことになりました。それに伴い線路の延長工事が始まります(ほんの14mですが・・・)。
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ただただ驚きです。私から見れば不遇の日々を送っていたキハ605。それが令和に入り、よもや岐阜の地で、命を吹き込まれるとは思いませんでした。実際に動くまでにはまだ日にちがかかると思いますが、キハ605にとっての啓蟄の日を、一日千秋(いちじつせんしゅう)の思いで待つこととなりました。
私にとってはご縁がご縁を結んでキハ605の見学にやってきた「コンテナのアオキ」。そこでこうした展開を知ったことは単なる偶然とは思えず、これから何某かの応援を始めたいと思っています。
(見学について)
住所:〒501-6229 岐阜県羽島市正木町坂丸1-50 福祉施設「コンテナのアオキ」
※名鉄竹鼻線須賀駅から徒歩で15分ほど。
キハ605の見学は、外から見て頂く分にはいつでも可。
また月曜日~土曜日の昼間の時間ならば、職員に声をかけて頂ければ内部を見学することも出来るそうです。

福祉法人 岐阜羽島ボランティア協会ではこのエリアで様々な施設を持ち、活動をしています。そしてそこに通う方達が作ったものを「コンテナのアオキ」の事務所でも販売しています。よろしければキハ605と貨物コンテナの見学がてらご覧下さい。
(おまけ)

「コンテナのアオキ」の入り口にあるこの警報器。
1951年(昭和26年)式ゴング式電鈴と点滅表示機だそうですが、何と毎日午前9 時、12時、午後3時の3回鳴るようになっています。訪問される場合は、その時間に合わせて行かれると良いと思います。
それにしても線路のない田園風景の中で聞く警報器の音ですが、唐突に聞いた私はただただ笑ってしまいました。さて皆さんの感想や如何に。